反論を設計に活かす──“もし今、機能しなくなったら?”から逆算する思考法【Prompt.036】

prompt.036

「なんだか制度がうまく回っていない気がする……」
組織やチームの中で、そんな“機能不全”を感じる瞬間は誰にでもあります。

何が原因なのか分からない。でも違和感だけはある。
その違和感を「とりあえず我慢」や「仕方ない」で放置していると、やがて仕組み全体が崩れていく──。

そんなときに有効なのが、あえて“逆から問い直す”という発想です。
この記事では、思考プロンプト「このルールが“今まさに機能しなくなった”としたら、最初に何が問題になりますか?」を起点に、
制度や仕組みの本質を再構成する方法をご紹介します。


目次

想定される状況

機能不全の状態から逆算して本質を探りたいとき。

制度、仕組み、文化、慣習など──当たり前に存在しているが、どこかうまくいっていない。
「改善したいけど、どこをどう直せばいいのか分からない」ときに特に有効です。

プロンプト

このルールが“今まさに機能しなくなった”としたら、最初に何が問題になりますか?

期待される結果

制度や仕組みの核心的な役割が浮き彫りになり、何を守るべきかが明確になる。


なぜ「反論」や「逆算」が効くのか?

私たちはつい、「うまくいっている前提」で考えてしまいがちです。
たとえば、

  • 「この制度は長く続いているから、まあ必要だろう」
  • 「みんな従っているから、大丈夫だろう」

という思考停止。

しかし、制度の本質は“存在していること”ではなく、“機能していること”にあります。

だからこそ、あえて逆の視点──
「この制度がもし、明日から使えなくなったら?」と問いかけることで、
何が一番最初に壊れるのか、誰が困るのか、どこが代替不可能なのかが明らかになるのです。


設計に活かす:思考の5ステップ

① 仮説を出す

例:「この報告フローが形骸化している気がする」

② 最も強い反論を仮定する

「いや、そもそも報告なんていらないんじゃないか?」

③ 反論がどこから来ているかを探る

・印象?(面倒くさいだけ?)
・構造?(誰のための報告?)
・立場?(現場と管理側で温度差がある?)

④ 本質的な懸念を抽出

「報告がなくなると、現場の進捗を見えなくなる=リスクの予兆が見えない」

⑤ 設計に反映

「“報告すること”ではなく、“異常が可視化されること”が目的」
→報告フォーマットを簡素化し、異常値だけが浮かび上がる仕組みにする


事例にみる設計への応用

【事例1】社内ルールの見直し

仮に「勤怠打刻システム」が突然使えなくなったら──
→最初に困るのは「労働時間の管理」
→でも本質的に守るべきは「法的な勤務時間の記録と安全管理」
→だったら“打刻”にこだわらず、「働いた事実をどう記録・証明するか?」を考えた方が建設的

【事例2】チーム文化のアップデート

たとえば「毎週の定例ミーティング」
これがなくなって最初に起きる問題は?
→「情報共有の場がなくなる」
→でも実はチャットツールでも代替できるのでは?
→本当に必要なのは“心理的なつながり”や“即興的な相談”かもしれない
→定例会議の代わりに、ペア雑談や朝の一言チェックインを導入する手もある


「壊してから考える」思考の効能

この思考プロンプトの最大の強みは、盲点をあぶり出せることです。

現存する仕組みは、良くも悪くも“当たり前”になっています。
だから、評価の対象にすらならず、問題があっても見過ごされがち。

しかし、

  • 「今すぐ機能しなくなったとしたら?」
  • 「そのときに真っ先に困るのは誰?」
  • 「何が壊れてしまうと、一番ダメージが大きい?」

と逆から見ることで、はじめて「何を守るべきか」がクリアになります。


否定は、壊すためではなく、再設計するためにある

「反論を設計に活かす」というテーマの本質は、
単なる“否定”ではなく、“よりよく設計し直す”ための問いです。

否定=悪ではない。
否定=編集です。

そして、「本当に大事なことは何か」を浮かび上がらせてくれる問いこそ、最も価値がある。


まとめ:今日から使える実践法

  • 自分の担当制度・業務・ルールについて
     「これが今、急に使えなくなったら?」と問いかけてみてください。
  • 最初に困ること=“守るべき本質”です。
  • 困らなければ、そもそもその仕組みは要らないかもしれません。
  • 「問題が起きたらどうするか」ではなく、「なくなったら何が問題か」で逆算してみましょう。

最後に

設計とは、未来への責任です。
そして、未来に残すべきものを選ぶには、一度“なくす前提”で考えるのが一番効果的なのです。

この問いが、あなたの制度設計・提案・改善の武器となりますように。

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