否定を設計に活かす──「もし称賛されるなら、何の価値観が前提か?」という逆問から始めよう【Prompt.035】

prompt.035

私たちは、ある行為や考えを「良い」「正しい」と信じ込んでいるとき、その背景にある前提を疑うことをほとんどしません。

でも、ふと立ち止まってみると、「なぜ、それが良いとされるのか?」「そもそも、どういう価値観に基づいているのか?」と問うことは、より深く、より創造的な思考への入り口になります。

そんな問いかけを促すのが、「Prompt.035」。
この記事では、その問いをどう使い、どう設計に活かしていけるのかを解説します。


目次

想定される状況

道徳的・文化的な前提を問い直したいとき

プロンプト

もしこの行為が社会的に称賛されるとしたら、
それはどのような価値観に基づいていると考えられますか?

期待される結果

行動の背後にある価値基準を捉え直し、無意識の前提を可視化できる


反論こそが、設計の原料になる

新しいアイデアを出したとき、どこかでこんな声が聞こえてきませんか?

「それって、ちょっと非常識じゃない?」
「そういうやり方は、日本では通用しないんじゃ…?」

こうした“違和感”や“否定”は、私たちの中にある「前提」に触れたときに生まれます。
でもその前提──たとえば「礼儀正しいのが正解」「年長者は敬うべき」といった道徳観や文化観──は、実は思考の妨げになっていることもあります。

ではどうすれば、その前提を見直し、設計に活かすことができるのか?

その鍵が、「反論を設計に活かす」視点です。


価値観を問い直す思考プロセス

ここで紹介する問いは、否定や反論を「設計に使う」ための一歩目です。

たとえば、あなたが「会議中に静かな人にも意見を求める文化を作りたい」と考えたとしましょう。

これを「良いこと」と信じて進める前に、こう問いかけてみてください。

「この行為が称賛されるとしたら、それはどういう価値観に基づいているのか?」

おそらく出てくる答えは──

  • 少数派や内向的な人の声も大切にしたい
  • 平等であるべきという価値観
  • 声の大きさではなく、考えの質に重きを置きたい

こうして、設計の根底にある“価値観”が見えてきます。


「価値観の可視化」が設計を強くする

多くの失敗する企画やデザインには、“無意識の前提”が潜んでいます。

たとえば、次のような例:

  • 高評価されるCMが、実は“性別役割”の固定観念に支えられていた
  • 新しいアプリの機能が“自己責任”という前提の上に成り立っていた
  • 教育コンテンツが“学歴社会”という価値観を前提に構築されていた

これらは一見「よくできている」とされるものでも、前提を問い直すことでその脆さや限界が露わになります。

逆に言えば、設計に「価値観の根っこ」を組み込んでおけば、強い反論が来たときでも揺らぎにくくなるのです。


反論から「設計への問い」に変える5ステップ

このプロンプトの活かし方は、以下の5ステップで実践できます:

  1. 仮説や提案を立てる
     例:「褒め合う文化を職場に浸透させたい」
  2. “それに反対する人”の声を想像する
     例:「馴れ合いで緊張感がなくなるのでは?」
  3. その反論が、どんな価値観に基づいているかを分析する
     例:「競争や成果主義の価値観に基づいている」
  4. 反論と自分の価値観の“対立軸”を明確にする
     例:「成果重視」vs「関係性重視」
  5. どちらの価値観を“設計に取り込むか”を決める
     → どちらも正しい。だから、「関係性を保ちつつ、成果に貢献するフィードバック文化」を設計に落とし込む

このように、反論を怖がらず“価値観の違い”として捉えることで、設計は一気に深くなります。


否定は編集。編集は設計。

反論とは、「この部分、ちょっと違和感あるよ」という編集指示に過ぎません。
否定されたら「攻撃された」と思うのではなく、「もっと良くするためのヒントだ」と捉える。

それが「反論を設計に活かす」思考です。

最終的に重要なのは、“議論する前に議論を設計する”こと。

そのためには、反論を先取りし、「どの価値観が前提になっているか?」という問いを、自らに向けることが欠かせません。


最後に:問いを設計に変える技術

今回紹介したPrompt.035は、反論を恐れず、価値観を明確にするための強力な武器です。

この問いを使えば、

  • なぜその提案に違和感を持つ人がいるのか
  • なぜその行動が称賛されるのか
  • なぜそのアイデアが理解されないのか

すべての“なぜ”に、構造的な視点で迫ることができるようになります。

そしてそれは、強い企画・強いプレゼン・強いチームを作るための基礎力となるのです。

あなたがもし今、「何かが引っかかる」「でもうまく言葉にできない」と感じているなら──
この問いを、ぜひ投げかけてみてください。

もしこの行為が称賛されるとしたら、
それは、どんな価値観に基づいているだろうか?

そこに、次の一歩があります。

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