「“誰が”じゃなくて“何が”が主語ですか?」──視点を変えて問題の構造を見抜く思考法【Prompt.051】

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「○○さんがやらなかった」
「部下が反応しない」
「上司が判断を止めたまま」

──こうした会話は一見、問題に向き合っているように見える。
だが実際は、思考が“人”という主語に絡めとられてしまった状態である。

このプロンプトが問いかけているのは、まさにその“主語の選び方”そのものだ。


【フェーズ3:提起・仮説構築 × 技術3:立場転換】


想定される状況
無意識的な構造やシステムを捉えたいとき

プロンプト
この話を、“人”ではなく“モノや仕組み”を主語にして見ると、どのように解釈できますか?

期待される結果
個人に還元されがちな問題を構造や環境の視点で捉え直し、システム的な解決策の発見につながる。


主語を間違えると、すべてがズレる

「人」に主語があるかぎり、思考は人の動機・性格・姿勢の話に引きずられていく。
けれども、構造の本質を言語化するには、「何がどう作用しているか」の文法が必要だ。

つまり、「人ではなく“モノや仕組み”を主語にせよ」というこのプロンプトは、
思考の構文(=構造と言語の対応関係)を入れ替えろというメッセージでもある。


たとえば、こんな構文の入れ替えが起きる

  • 「担当者が対応を怠った」
     → 「確認フローが担当者の個人依存になっていた」
  • 「部下が何も提案してこない」
     → 「提案が承認される期待値を学習できる環境がない」
  • 「また同じ人がミスを繰り返している」
     → 「再発防止策が“行動の結果”にだけ紐づいており、“構造の修正”が施されていない」

こうして主語を人から仕組みに変えた瞬間、
話題の焦点が「性格」や「意欲」ではなく、「設計」「設置」「制度」に移る。


プロンプトの背景にある認知構造の問題

この問いが必要とされる背景には、人間がもともと“主語=人”にしがちだという認知の癖がある。

  • 因果を語るとき、私たちは“誰が何をしたか”を軸に話を組み立てる
  • しかし、組織の問題の多くは“何が人にそれをさせているか”という構造に宿る

つまり、“人”を主語にして話している時点で、すでに因果の捉え方が浅くなっているのだ。

このプロンプトは、それを暴く。


「反論を設計に活かす」構造的設計の入口として

このプロンプトが生きる場面は、表面的な反論に直面したときだ。

たとえば──

  • 「○○さんのせいで滞ってる」
  • 「あの人がちゃんとやっていれば進んでいた」

このとき、「その人を変えること」が唯一の手段になってしまうと、問題は解決できない。

だからこそ、

「それが起きるのを防げなかった“仕組み”は何か?」
「その振る舞いを構造的に再現してしまう設計はどこか?」

と問い直すことで、“反論”をきっかけに構造を再設計する対話へと昇華させることができる。


最後に:主語が変わると、設計思考が始まる

人に原因を求めるのは簡単だ。
でも、それでは「解決」は生まれない。

「この話、モノや仕組みを主語にして見たらどうなるか?」
この問いを立てた瞬間、
私たちは“人を責める思考”から、“構造を編集する思考”へと脱皮する。

それが、このプロンプトの本当の効力だ。
問題を誰かの問題にせず、構文そのものを変えること。

そこから、設計としての思考が始まる。

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