「逆が正しいとしたら?」──思考の視野を180度転換するための仮説の立て直し【Prompt.054】

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「いや、それは違う」「そんな考え方、ありえない」
こうした“否定”は、しばしば対話や思考を止めてしまう。

でも──もしその真逆の主張が「正しい」としたら?
世界はどんなふうに見え、どんな前提が成り立つのか?

このプロンプトは、そうした“視点の反転”によって、
自分の思考にとって不可視だった前提や論理構造を炙り出す道具だ。


【フェーズ3:提起・仮説構築 × 技術4:対比構造】


想定される状況
視点を180度転換して考察したいとき

プロンプト
“むしろ逆の主張が正しい”とした場合、どのような世界観や前提が成り立つでしょうか?

期待される結果
対立する視点の論理や背景に目が向き、柔軟で多角的な思考が促される。


なぜ「逆の主張」を仮定するのか?

私たちは、「正しいこと」を積み上げる形で物事を考える癖がある。
しかし、そのやり方にはひとつの大きな落とし穴がある。

前提がズレていたら、全部ズレる。

そしてこの“前提”は、往々にして「見えない」もの。
だからこそ、「真逆の仮説を立てる」という“破壊的思考”を一度通すことで、自分が依拠していた世界観の輪郭が浮かび上がるのだ。


たとえば──あなたの「常識」が裏返ったらどうなる?

以下のような問いはどうだろう。

  • 働き方改革は「生産性を上げるため」に行う?
    → 逆に、「ゆるめることで創造性が戻る」としたら?
  • 顧客第一は当然?
    → むしろ「従業員を最優先にするほうが、結果として顧客満足が上がる」としたら?
  • 若手は“成長意欲があるべき”?
    → 「安定志向があるからこそ、戦略的に動ける」としたら?

このように「真逆の前提」に立った瞬間、
いままで見えなかった論理、背景、構造が立ち現れてくる。


プロンプトの効用:対立構造の“設計図”が見える

この問いが本当に力を発揮するのは、「反論を設計に活かす」場面だ。

表面的な意見の対立に直面したとき──
それを「どちらが正しいか」という話に落とし込んでしまうと、対話は袋小路に入る。

だが、「相手の主張を一度“正しい仮説”として立ててみる」とどうなるか?

  • その仮説が依拠している価値観
  • その主張が必要とする文脈
  • その前提が通用する条件

こうした“思考の裏設計”が見えてくる。

つまりこれは、相手の思考構造をリバースエンジニアリングするプロンプトなのだ。


使用例:「逆が正しい」世界観を仮構してみる

以下は、実際の議論に応用できる使用例だ。

ケース1:「出社とリモート」どちらが効率的か?

  • 通常の主張:「リモートの方が効率がいい」
  • 逆仮定:「出社の方が効率がいいとしたら?」

→ 出社によって“偶発的な情報共有”や“非言語コミュニケーション”が生まれ、
業務全体の意思決定スピードが上がっているかもしれない。

→ つまり、“情報の質”と“判断速度”という評価軸では、出社の方が優れているという構造も見えてくる。

→ 結果:「どちらが優れているか」ではなく、「どの指標で評価するか」に思考が進化する


ケース2:「高学歴=優秀」は本当か?

  • 通常の前提:「高学歴の人は優秀」
  • 逆仮定:「むしろ高学歴は“偏った視野”を持っているとしたら?」

→ 知識や理論に偏りすぎて、実践や現場感覚が鈍い可能性はないか?

→ 「優秀さの定義」によって、評価構造そのものが揺らぐ。

→ 結果:「優秀さとは何か?」という本質的な問いにたどり着く


このプロンプトが機能する“場面”とは?

この問いは、以下のような状況で特に力を発揮する。

  • 相手の意見が極端に見えて理解できないとき
  • 自分の仮説が正しすぎて“揺るぎない”ように感じるとき
  • 議論が対立構造から前に進まないとき
  • あえて視点を反転させて“別の設計”を試みたいとき

言い換えればこの問いは、**思考に詰まりを感じた瞬間の“構造破壊ツール”**だとも言える。


最後に:思考は、逆から見ると構造が浮かび上がる

「逆が正しい」とは、ただの逆張りではない。
それは、“あえて視点を破壊してみる”という知的挑発だ。

そうすることで、私たちは自分が何を前提にし、
何に依存し、どんな構造で世界を理解していたのかを明らかにすることができる。

このプロンプトは、それを手助けするためのひとつの“起爆装置”だ。
今信じていることが、もし全くの逆だったら──。

その仮説を怖がらずに遊んでみよう。
そのとき、あなたの思考の視野は180度ではなく、360度に広がる。

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