伝える力は、ひらがな一文字から始まる:「ひとことで言う」ことで、本質が見える理由【Prompt.060】

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私たちはふだん、考えを深めようとするとき、つい「もっと多くの情報」「もっと長く丁寧に説明しよう」としがちです。資料は増え、言葉は複雑化し、やがて“自分でも何が言いたかったのかよくわからなくなる”という状態に陥る。

あなたも、そんな経験はありませんか?

実は、思考を深めることと、言葉を増やすことは、必ずしも同じではないのです。むしろ、「削ぎ落とす」ことこそが、本質に近づくための近道になることもある。

そんなときに使いたいのが、今回紹介するプロンプト──


フェーズ3:想起・仮説構築 × 技術5:言語化と評価

Prompt.060「この内容を、ひらがなだけを使って“ひとこと”で表現すると、どのようになりますか?」


想定される状況

  • 話がやたらと長くなる
  • 会議で「何が言いたいのか」が分からない
  • プレゼンのスライドが文字だらけ
  • 自分でも、核心をつかみきれていない

つまり、「複雑さ」に埋もれてしまっているときです。

このプロンプトが発揮する力は、その名の通り**“ひとことで言い切る”ことによって、余計な装飾をそぎ落とし、思考の核を浮かび上がらせる**ことにあります。


プロンプト

「この内容を、ひらがなだけを使って“ひとこと”で表現すると、どのようになりますか?」

一見、ただの制限プレイのように見えるかもしれません。

でも、これは思考のスイッチを強制的に切り替える“ハードな言語トレーニング”であり、同時に本質を掴むための「構造の再構築」なのです。


なぜ「ひらがな」だけなのか?

漢字を使えば、概念は一気に高度になります。

たとえば「本質」「課題」「構造」「変革」──どれも便利で洗練された言葉ですが、同時に「思考停止ワード」にもなりがちです。人は難しい漢字を使うことで、自分の言いたいことを「言えた気になってしまう」からです。

ところが、ひらがなだけという縛りをかけた瞬間、頭の中の言葉が使えなくなり、自分の言葉で、自分の思考を掘り直すことが求められる。

たとえば、

  • 「にんげんかんけいがむずかしい」
  • 「やりたくないことをやってる」
  • 「こころがつかれている」
    ──これらは、専門用語や抽象語ではなく、「感じていること」そのままです。

つまり、「言い換え」ではなく「言い当てる」言葉を、自分でつくる力が磨かれるのです。


このプロンプトを使うと、何が起きるか?

  1. 複雑な話を一度分解し、再構成する力がつきます
  2. 本当に伝えたい感情や欲求、違和感が言葉になる
  3. 余計な前提やバイアスが削ぎ落とされ、フラットな視点になる

とくに、チームでの合意形成が難しいとき、アイデアを磨ききれていないとき、最後の“仕上げ”としてこのプロンプトは非常に効果的です。


活用事例:このプロンプトが効いた場面

【ケース1】プロジェクト提案のネーミングに悩んだとき

いくつかの候補名が並ぶ中、「これって、どんな“気持ち”の名前?」と問うと曖昧に。

そこでこのプロンプトを使って、「このサービス、ひらがなだけで“ひとこと”にすると何?」と聞いたところ──
→「つながりたい」
→「ふつうのしあわせ」
→「いきてるってこと」

そこから一気に、コピーやコンセプトが再構成され、開発方針までもが明確になった。

【ケース2】部下のモヤモヤを言語化するとき

部下が「なんとなくうまくいかない」と悩んでいた場面。

あえて、「じゃあ、ひらがなで“いまのじぶん”をひとことで言ってみて」と促した。

→「がんばってるのにむくわれない」
→「わすれてほしい」
→「だれかにきづいてほしい」

そこには、本人も気づいていなかった感情の本音があった。


「ひとこと」は、甘くない

このプロンプトは、決してラクではありません。

“ひらがな”という制限があるぶん、思考を練る必要があります。そして、“ひとこと”という縛りがあるからこそ、逃げられない。

でも、その「言えなさ」にこそ、自分の思考の未整理が現れます。

うまく言えないときは、まだ自分の中で何かがモヤモヤしている証拠です。


最後に:「伝える」は「削る」から始まる

私たちはつい、たくさんの言葉を使いたくなります。

でも、伝わる文章は、短く、やさしく、明快です。

そしてその“短さ”の奥には、徹底的に磨かれた思考と、削り落とされた余分な情報がある。

このプロンプトは、ただの言葉遊びではありません。

  • 書く前に
  • 話す前に
  • 発信する前に

「ひらがなで、ひとことにすると?」

この問いを、ぜひ自分に投げかけてみてください。

思考の核が見え、言葉の“芯”が立ち上がるはずです。

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