具体的な事例を“抽象化”すると何が起こるか?──思考を進化させる問いの力【Prompt.083】

prompt.083
prompt_100_list

「この経験は、自分だけの話なのか? それとも他にも応用できるんだろうか……」

そんなことを感じたことはありませんか?

仕事や日常の中で「うまくいった例」や「大変だった出来事」に遭遇したとき、私たちはその“具体”に目を奪われがちです。でも、そこにある本当の価値は、その裏にある“原則”や“構造”に気づけるかどうかで決まります。

この記事で紹介するプロンプトは、そんな“事例を単なる経験で終わらせない”ための鍵になります。


【プロンプト情報】

【フェーズ5:発表・言語伝達 × 技術1:具体と抽象】

  • 想定される状況:
    具体例から上位の概念へと思考を促したいとき
  • プロンプト:
    逆に、この具体的な事例は、どのような抽象的な概念や法則を示す例と言えますか?
  • 期待される結果:
    個別の事例の背後にある普遍的な原理や構造が見え、応用や体系化が可能になる。

1. 背景の解像度

なぜ「抽象化」が必要なのでしょうか?

一言で言えば、「経験を“再利用”するため」です。

多くの人が、自分の体験やプロジェクトを「経験談」として語ります。でも、それが他の場面に応用できる形で共有されることは意外と少ないのです。

これは教育、ビジネス、プロジェクト管理など、あらゆる分野で起こる“もったいない現象”です。
なぜなら、抽象化を通して初めて「応用」「応答」「体系化」が可能になるからです。

成功も失敗も、具体例で終わらせてしまえば、それは“自分だけの学び”です。
しかし、その事例から「共通する構造」を導き出せば、チームにも、後輩にも、未来の自分にも価値を渡せます。

その思考のジャンプを助けてくれるのが、今回紹介するプロンプトです。


2. プロンプトの構造理解

このプロンプトは、一見すると問いかけとしてシンプルです。

「逆に、この具体的な事例は、どのような抽象的な概念や法則を示す例と言えますか?」

でもここには、重要な思考ステップが組み込まれています。

  • 「逆に」という視点転換:
    まず、物事を“逆から見る”意識を促す。これにより、思考の向きを切り替えます。
  • 「抽象的な概念や法則」という指示:
    単なる感想や結果ではなく、“構造”や“原理”に目を向けるよう促します。
  • 「示す例と言えるか?」という認識化:
    具体→抽象へと飛躍することで、経験を“概念の証拠”へと昇華させる構造です。

つまりこれは、「思考の素材として具体を使い、そこから再利用可能な知見へと変換する問い」なのです。


3. 活用シーン・事例(2つ)

事例1:社内で起きたトラブルからの抽象化

Before:
ある部署での納期遅延について、個別に「担当者の問題」「連絡ミス」とだけ認識して終わっていた。

プロンプト活用:
「このトラブルは、どんな抽象的な構造の例だろう?」

After:
「これは“曖昧な責任分担と属人的判断”が生む構造的遅延の例」と抽象化。
→ 他部署にも応用できる「役割定義と判断基準のテンプレート」作成に発展。


事例2:新人教育での成功体験

Before:
新人スタッフがある指導方法で急成長。「この子は伸びた」で終わっていた。

プロンプト活用:
「この成功例は、どんな法則や構造を示す例だろう?」

After:
「この指導は“段階的な目標設計と自己評価の機会”が学習モチベーションを高めた構造の一例」
→ 教育マニュアルに「3段階メソッド」として体系化。


4. 応用・再設計の可能性

このプロンプトは、活用次第であらゆる分野に広がります。

  • 教育現場:
    授業後に「今日扱った事例は、どんな法則の例だったと思う?」と問い返すことで、理解の抽象度を引き上げられる。
  • 経営判断:
    成功事例をただの勝利として扱うのではなく、「その背後にあった原則は何か?」を明確にすることで、事業戦略としての一貫性が生まれる。
  • プレゼン設計:
    事例紹介のあとに「この事例は、どんな普遍的構造を示しているか?」を加えることで、聴衆の汎用理解を引き出せる。
  • 個人の振り返り:
    「この失敗は、自分にとってどういう思考のパターンの表れだったのか?」と掘り下げることで、自己理解が深まる。

つまり──抽象化は、再現性と共有性を生む力です。


5. 最後に(締め)

あなたが経験した出来事には、あなただけの価値があります。
でも、それを“概念”に引き上げることで、それは他者にも役立つ“知識”に変わります。

「この事例は、どんな抽象的な概念や法則の例だろう?」

たったこの一問いが、経験を「資産」に変える第一歩です。

もう、事例を“自分語り”で終わらせない。

「言葉にする→抽象化する→共有できる知にする」
その思考の階段を、あなた自身の手で登ってみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!